チューリップは好きな花のひとつで、これまで折々に触れ撮影してきました。
思い返せば、20代で開いた初個展には日常のスナップや風景、静物、人物等々、様々な種類の写真を展示しましたが(意気込みすぎてたくさん作ってしまい、壁面に飾れず床に置いたものもありました)、その多々あるイメージの中から案内ハガキ用に選んだのも、チューリップの写真でした。窓辺で陽射しを浴び、暗い背景に姿を浮かび上がらせているチューリップです。
また、30代で上梓した私の最初の写真集『LIFE』は、生まれたばかりの娘に捧げたチューリップの花束が、その枕元で咲き、そして枯れてゆく過程を写したシリーズです。全てチューリップの花だけで構成した一冊です。
40代には、スキャングラムという手法(※2)を用いて、カラー作品を制作しました。赤や黄色のチューリップが、フォトグラム的な効果によって、青い花へと生まれ変わりました。
今回の展覧会には、カラーのスキャングラムと「LIFE」シリーズの一部も展示する予定ですので、そちらも合わせてお楽しみ頂けたらと思います。
(※1 )フォトグラムは、感光紙の上に直接物体を置いて光を当て、そのシルエットを焼きつける古典的な写真技法。
(※2)スキャングラムは、スキャナを用いて写す写真技法。フラットベッドスキャナに直接物体を載せ、透過原稿用モードで撮影するとフォトグラム的な効果が得られる。
西村陽一郎 略歴
1967年東京都西東京市生まれ。美学校で写真を学び、撮影助手を経て1990年にフリーランスの写真家として独立、現在に至る。 カメラを使わない写真技法であるフォトグラムやスキャングラムを中心に、植物や昆虫、鳥の羽、水、ヌードなどをモチーフとした作品を発表している。個展、グループ展多数。2002年より美学校写真工房講師、2012年より東京造形大学写真専攻非常勤講師。 1999年より神奈川県逗子市在住。
■西村陽一郎オフィシャルホームページ https://www.yoichironishimura.com/