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「フォトグラム 」

 

 一般的にフォトグラムとは、カメラやレンズを使用せずに、印画紙上に直接物体を置いて光を当て、その時に出来た影を定着させた画の事、又はその技法をいいます。フォトグラムのフォトは「光」、グラムは「書かれたもの」を意味します。子供の頃遊んだ「日光写真」または「影絵」を思い出してもらえれば近いでしょう。
 でも実際には写真用に作られた感光性の非常に高い印画紙やフィルムなどを使い、露光後には現像作業もしなければならないので、暗室(外の光が洩れて来ないように仕切った真っ暗な部屋)の中での制作になります。
 カメラを使う写真は外に出て~光の中に小さな闇を持ち込んで~撮るものですが、フォトグラムは内に入って~闇に光を持ち込んで~撮るという面白さがあります。それは、いわばカメラの中に入るような行為でもあります。

 モノクロ写真の感光材料は、光を当てて現像すると黒く変化するという性質を持っています。その性質には光の量が多いと黒が濃く、少ないと薄くなるという法則があるため、物が光を干渉(反射、吸収、透過、遮蔽など)することによって感光材上に落ちる光と影の中に微妙な明暗の差が生じると、それがそのまま白と黒の間を繋ぐ豊かな階調に置き換えられます。ただ、明るい所が黒く(暗く)暗い所が白く(明るく)なる訳ですから、出来上がりの画は実際とは明暗が逆転したもの(ネガ)になります。フォトグラムはその光学、光化学的な原理をシンプルに利用した「光の画」であり、最も純粋な写真的現象であるといえます。

(2003.6)

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